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デジタルレジスタンス機器「VOLTRA」を既存のフリーウェイト器具と組み合わせたら、どこまでトレーニングの幅を広げられるのか。
今回は、VOLTRAとコンボラックを組み合わせた次世代ベンチプレス台を製作し、実際にトレーニングで使用してみました。
スマホでの重量変更、可変抵抗、動作速度や出力の計測など、通常のフリーウェイトでは難しい機能を取り入れることで、どのようなトレーニングが可能になるのか。その使い勝手やメリット、見えてきた課題まで検証していきます。

今回使用したのは以下の機材です。
・BEYOND POWER VOLTRA I ×2台
・VOLTRA スライド式ラックマウント ×2個
・ROGUE コンボラック ×1台
・バーベル、バーベルカラー ×1セット
・ケーブルとバーベルを接続する部品 ×2個
ROGUEのコンボラックを使用したのは、スライド式ラックマウントを取り付けやすい形状だったためです。

まず、2台のVOLTRAをベンチ台の両側にセットします。
ROGUEのコンボラックには、スライド式ラックマウントを無加工で取り付けることができます。ベンチ台の種類によっては、加工が必要になる場合もあるでしょう。
VOLTRAは左右に1台ずつ設置し、「ペアリングモード」を使用します。ペアリングモードを使用することで、2台のVOLTRAを同期させ、一度に調整することができます。
バーベルとケーブルを接続する部品は、手持ちのパーツを組み合わせて自作しました。
今回は、モノタロウで購入したオイルレスワッシャー(品番:SSW-5008)にカラビナを装着しています。カラビナを通す部分の穴が少し小さかったため、電動ドリルで拡張しました。

※使用者が乗るベンチ部分とフレーム全体が接続されていないベンチ台の場合、土台部分にVOLTRAを接続してベンチプレスを行うと、ラック自体が持ち上がって転倒する可能性がありますのでご注意ください。コンボラックを使用する場合も、使用者が乗るベンチ部分とVOLTRAをマウントする土台部分が、しっかり接続された状態であることをトレーニング前に確認してください。
VOLTRAとバーベルを接続したら、VOLTRAをBluetoothでアプリに接続し、ペアリングモードで操作します。
2台をペアリングすると、左右の合計抵抗が表示されるようになります。
私が使用しているVOLTRAにはベータ版ソフトウェアが入っており、2台合計で最大208kgの抵抗を設定できます。20kgのバーを使用した場合、単純計算では最大228kg相当となるため、負荷としてはほとんどの方にとって十分だと思います。
あとは重量を設定して、トレーニングを行うだけです。

私(店長・神野)が実際にVOLTRAベンチプレス台を使用して感じたことを書いていきます。
まず、プレートを付け替える必要がなく、ベンチに座ったまま指先の操作だけで重量を変更できる点がとにかく快適でした。
さらに大きなメリットが、フリーウェイトでは難しかった抵抗曲線の調整と、トレーニングデータの計測が可能になることです。
ベンチプレスでは、ボトム付近では大胸筋、トップ付近では上腕三頭筋の関与が大きくなり、可動域によって発揮できる力が変化します。
そのためパワーリフティングでは、これまで以下のような器具を使い、可動域によって負荷を変えるトレーニングが行われてきました。
・バンド
・チェーン
・スリングショット
しかし、これらの方法では、ボトムとトップで実際に何kgの負荷がかかっているのかを正確に把握しにくく、細かな調整も簡単ではありません。
VOLTRAでは抵抗曲線を数値で設定できるため、こうしたトレーニングをより正確に行うことができます。
例えば、
・ボトムを軽く、トップを重くする可変抵抗
・ウェイトリリーサーのように特定局面で負荷を変化させる設定
・ネガティブ局面で負荷を増やすエキセントリックトレーニング
といった設定を、精密に行うことができます。
これは通常のフリーウェイトでは再現が難しいトレーニングです。
また、VOLTRAには動作スピードに応じて抵抗が変化するダンパーモードもあるため、スピードベンチのようなトレーニングにも活用できます。
ジャンピング・プッシュアップのような、爆発的な筋出力を高めることを目的としたトレーニングについても、動作データを確認しながら行うことができます。
さらに、動作速度を計測できるため、VBT(Velocity Based Training)への活用も可能です。
重量だけではなく、バーの速度を基準に負荷設定やセット終了の判断を行える点も大きな特徴です。
デジタル抵抗によるベンチプレス、可変抵抗による終動負荷トレーニング
(1レップ目で挙上距離を自動計測し、2レップ目から設定した40〜60kgの範囲で可変抵抗がかかります)
動作スピードが上がるほど抵抗が増加するダンパーモードを利用し、出力計測を行いながらのスピードトレーニング
・重量変更をスマートフォンから手元で行える
・さまざまな可変抵抗トレーニングを精密に行える
・動作速度やレップ数を計測できる
・大量のプレートが不要で、ホームジムでも床への負担を抑えやすい
さらに、VOLTRAのアプリではAIによるデータ分析やメニュー作成も試験運用されており、将来的には、トレーニングデータをAIで分析し、個人に合わせたトレーニングメニューを提案するといった活用にも発展していく可能性があります。
もちろん、デメリットもあります。
・デジタルレジスタンス機器はプレートと比較して高価
・VOLTRAを接続できるラックが限られており、構造上取り付け可能でも加工が必要な場合がある
・フリーウェイトと完全に同じ使用感ではない
・定期的な充電が必要
純粋なバーベル競技の練習という意味では、通常のバーベルとプレートを完全に置き換えるものではありません。
今回のテストでは、左右のケーブルをバーベルのスリーブ部分に接続しています。
この接続位置は、できるだけバーの中心側に寄せる必要があると感じました。何らかの理由で片側のVOLTRAだけが作動した場合、ケーブルの接続位置によってはバーベルが大きく回転する可能性があり危険です。
ケーブルの接続方法や位置については、安全性を最優先に、さらに工夫していく必要があると考えています。
使い慣れたフリーウェイト器具であれば、アスリートやトレーニング愛好家は、安全上の注意点をある程度把握しているでしょう。
しかし、デジタル抵抗を組み込んだ器具では、従来のフリーウェイトとは異なる安全管理が必要になると感じます。
まだ歴史の浅い器具であり、どのようなトラブルが起こり得るのかという情報も十分ではありません。例えば、トレーニング中に突然機器が停止・故障した場合でも事故につながらないよう、二重三重の安全対策を考えておく必要があります。
そうした課題を考慮しても、大量のプレートを揃えることが難しいホームジムでのトレーニングや、フリーウェイトでは難しい可変抵抗・速度計測を活用したトレーニングでは、非常に大きなメリットがあると感じました。
このVOLTRAベンチプレス台は、充電時以外はVOLTRAを取り付けたまま運用できるホームジムやプライベートジム、常にスタッフが管理できるアスリート施設やリフティングジムのような環境との相性が非常に良いでしょう。
例えば、
・ホームジム
・プライベートジム
・アスリート向けトレーニング施設
・パワーリフティングジム
・スタッフが常駐しているトレーニング施設
などでは、非常に使いやすいと思います。
特にホームジムとの相性は抜群です。
大量のプレートを保管する必要がないため、床への荷重を抑えやすく、重量変更も非常に簡単です。省スペースで高度なトレーニング環境を作ることができます。
一方、VOLTRA自体が高価で、定期的な充電も必要となるため、不特定多数の人が利用する大型商業ジムで、この状態のまま常設する運用は、現時点ではあまり現実的ではないと感じます。
VOLTRAと既存のフリーウェイト器具の接続については、引き続きテストを続けていきます。
近いうちに、パワーラックとの接続について検証する予定です。ぜひご期待ください。