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【特集Vol.5】本当に器具にこだわるなら、“フリーウェイト”こそ後回しにしてはいけない理由

【特集Vol.5】本当に器具にこだわるなら、“フリーウェイト”こそ後回しにしてはいけない理由

本当に“器具にこだわったジム”と言えるために
——フリーウェイト器具選び、見落としていませんか?

 最近、SNSやホームページで「器具に徹底的にこだわった」と発信するジムを見る機会が増えてきました。こうしたジムの多くは、最新のトレーニングマシンをブランドや機能まで丁寧に比較検討し、目的に合わせて導入されています。その取り組みは本当に素晴らしく、トレーニング環境づくりへの情熱を感じます。

一方で、バーベルやラック、ウェイトベンチ、プラットフォームといったフリーウェイト器具に関しては、マシンメーカーが展開するラインナップから「なんとなく」選ばれている例も少なくありません。もちろん、大手マシンメーカー製のフリーウェイト器具であれば一定の品質は担保されており、実用面で問題があるわけではありません。

ただ、フリーウェイト器具は“体が直接触れて動かす”最も基礎的なトレーニングツールであり、使用感や安全性、動作のしやすさなど、細かな部分がトレーニングの質そのものに影響します。そのため、マシンとは異なる観点での設計精度やノウハウが求められる場面が多いことも事実です。

「器具にこだわる」と発信しているのに、マシンには徹底したこだわりがある一方、フリーウェイト器具が後回しになっているケースを見ると、専門メーカーのフリーウェイトを扱ってきた私たちとしては、少しだけ口惜しい気持ちになることがあります。

本来、バーベルやラック、ウェイトベンチはトレーニングの“核”となる存在です。だからこそ、長年フリーウェイトを専門に手掛けてきたメーカーが作る器具には、耐久性・安全性・使用感といった細部まで、一つ一つの違いが積み重なっています。

私たちは、その違いこそが“本当に良いトレーニング環境”をつくると考えています。

今回のメルマガでは、「なぜ専門メーカー製のフリーウェイト器具を選ぶ価値があるのか」について、特に バーベル と ラック の2点から、分かりやすくお伝えしていきます。

 


暗いジム内でELEIKOロゴ入りブラックプレートを装着したバーベルを斜め前方から捉え、フリーウェイトの質感と存在感を強調

■ バーベルについて

 この約20年間で、バーベルを取り巻く環境や使われ方は大きく変化しました。ファンクショナルトレーニングやリフティングスポーツの広がりにより、バーベルは「落として使うことが前提の器具」として扱われるようになり、求められるスペックは以前よりもはるかに高度なものになっています。そのため、従来型の静的な強度試験だけでは実際の使用状況を評価しきれず、動的な衝撃に対する耐性が非常に重要になってきました。

ROGUE や ELEIKO をはじめとする世界的な専門メーカーは、こうした使用環境の変化をいち早く捉え、動的荷重を含む独自の耐久試験を重ねながら改良を続けています。また、競技現場やトレーニング施設からのフィードバックを反映し、わずかな使い心地の違いにもこだわってアップデートを進めています。

さらに、専門メーカーは目的ごとに多様なバーベルをラインナップしており、パワーリフティング、ウエイトリフティング、一般的なトレーニングなど、それぞれに最適な1本を選ぶことができます。

一方で、マシンメーカーが製造するバーベルは選択肢が限られ、メイン商材ではないため開発の深度もどうしても浅くなりがちです。もちろん、実用性が低いという意味ではありませんが、現在主流のトレーニングスタイルに最適化されているとは言い難い場面も見受けられます。

バーベルはトレーニングの根幹となる器具です。だからこそ、“本当に信頼できる専門メーカーの1本”を選ぶ価値は、今の時代ますます大きくなっていると感じます。

 


木目壁と黒フレームのラックを正面寄りに配置し、バーベルやプレートが収まる洗練されたフリーウェイトエリアを俯瞰気味に描写

■ ラックについて

 ラックもまた、この20年で劇的に進化した器具のひとつです。特に北米を中心に広まった「モジュール構造」のラックは、用途やスペースに合わせて柔軟に組み替えることができ、機能性・安全性・拡張性のあらゆる面で、従来の固定構造のラックとは異なる進化を遂げています。

フリーウェイト専門メーカーはすでにこの構造を標準化し、Jカップ、セーフティ、プルアップバー、アタッチメント類に至るまで細部までこだわった設計を続けています。競技現場やアスリートからのフィードバックも継続的に反映され、実際のトレーニングでの使いやすさが非常に高いのが特徴です。

一方、多くのマシンメーカーはこの流れへの対応が遅れており、現在でも固定構造のラックを主軸としているケースが多く見られます。実際に、Jカップ形状がラックアップに適していなかったり、セーフティの調整幅が粗く微調整が難しいなど、基本動作に関わる部分が長年改善されていない例もあります。

こうした違いは、単に“良い悪い”ではなく、どれだけフリーウェイト器具そのものに重点を置いて開発されてきたかの差が表れていると言えるでしょう。

 


■ なぜ“フリーウェイトの質”が重要なのか

 マシン類に強いこだわりを持って選定されたジムでも、フリーウェイト器具が専門外のメーカーのカタログから“何となく”選ばれている場合、どうしてもトレーニング環境としてのバランスに偏りが生まれてしまいます。少し極端なたとえですが──

全身は高級スーツで決めているのに、靴だけはビニール製を履いているようなもの

と言えば、イメージしやすいかもしれません。

もし本当に「最高の器具を揃えたジム」を目指すのであれば、マシンと同じように、フリーウェイト器具も専門メーカー製のものを選ぶべきだと私たちは考えています。

しかし現状として、専門メーカー製のフリーウェイト器具の価値は、まだ十分に広く認知されているとは言えません。これは市場の問題だけではなく、私たち専門店側の情報発信力やサポート体制がまだ不十分であることも要因のひとつです。

実際、大手24時間ジム本部のご担当者からは、

「多くのフランチャイズオーナーはフリーウェイトに興味がなく、バーベルやラックは一番安いものを選びがち」
「良いフリーウェイト器具を入れても、お客様の多くが違いを知らないため、集客につながりにくい」

といった声もよく伺います。

だからこそ、本物のフリーウェイト器具の“価値”と“必要性”を正しく伝えることが私たち専門店の役割だと強く感じています。価値ある情報を発信し、適切なサポート体制を整え、皆様が自信を持って「本物」を選べる環境を整えること──これこそが私たちの責務です。

 


 


筆者:店長 神野
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