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07, バーベルの耐久性について

オリンピックバーベルを選ぶ時、誰でも頑丈で長く使える製品を選びたいと考える筈です。ではバーベルの真の耐久性をはかる指標、そしてより頑丈なバーベルを選ぶ方法はあるのでしょうか?

 

『耐荷重量』という無意味な数値

バーベルの製品仕様を確認すると『耐荷重量』(または定格重量)といった数値が載っている事があります。

これは一見役に立つ数値に見えますが、実際こういった耐荷重量には全メーカー統一の規格というものは何も無く、メーカーによってばらばらの基準で測っているため、メーカーの公表する耐荷重量は実際ほとんど何の参考にもなりません。

前提となる条件が統一されていないテストの数値は少なくとも他メーカーの製品を比較する目安にはならず、ある老舗バーベルメーカーはバーベルの耐荷重量を『知識の無いユーザーを満足させるために作られた空想』と切り捨てました。

※メーカーはわかりやすい目安の数字を求める市場の要求に対して応えざるをえないため、メーカー自身も意味のない数値である事を理解しつつ独自に定めた規格での耐荷重量を設定しているケースは多く見られます。

 

バーベルの耐久力

バーベルの表面処理のページでも記載した通り、近年のバーベルスポーツやファンクショナルトレーニングの隆盛、リフターやアスリートが扱うトレーニング重量の増加は、バーベルに求められる要求スペックを大きく変えました。

現代のバーベルはBIG3のような高重量でのスローリフトでの応力(静的応力)とクリーンやスナッチのようなクイックリフトでの応力(動的応力)の2種類のストレスに晒されています。

この2種類のストレスに対する耐性がバーベルの耐久力になります。

 

静的応力に対する耐久力の目安は『引張強度』

バーベルの静的応力に対する強度については、規格の無い耐荷重量ではなく、国際規格である引張強度(単位は重量ポンド毎平方インチの略であるPSI)を目安にするのが一般的です。

引張強度はバーベル強度の最も一般的な指針として長年使用されてきたもので、実際にバーベルの耐久性を測る目安として有用です、引張強度の低いバーベルは高重量使用に耐えられず曲がる可能性があります。

引張強度が190,000PSIを超えればスローリフトによる応力で曲がりが問題になる可能性はほぼ無くなると言われています。

引張強度については、バーベルメーカーはカタログスペックを競争し、更にどのメーカーも同じように「他社のカタログスペックは誇張されている」と主張してきた歴史があります。

現在本格的なオリンピックバーベルの大部分は190,000PSIを超えるスペックが主張されていますが、顧客がそれを事実であるか確認するのは困難です。

 

動的応力への耐久力は複雑な要素が絡む

バーベルへのストレスは静的応力に起因したものとは別に動的応力で起こるものがあります。前述のリフティングスポーツとファンクショナルトレーニングの隆盛はバーベルへの動的応力を飛躍的に増加させました、現在のバーベルは一昔前よりも遥かに強い動的応力を受けています。

動的応力の中心になるのが、バーベルをドロップした際にシャフトの特定部位に掛かるストレスです。

この『動的応力』によるストレスに対する耐久性については、"引張強度の高さ=耐久性"という単純な図式にはならず、引張強度が高すぎると動的応力に対する耐久性はむしろ低下するという研究結果が示されています。

更に、動的応力に対する耐久性にはバーベルメーカーの研究により表面処理・スリーブ長・シャフト直径・スリーブの耐久性といった要素も大きな影響を与える事が明らかになっています。

 

バーベルの動的応力に対する耐久性に影響を与える要素

バーベルの動的応力に対する耐久性は主に下記の要素の影響を受けます。

・引張強度 引張強度が190,000PSIから220,000PSIのあいだである時に動的応力に対する耐久性が最も高くなります。数値よりも低い場合はもちろん、高すぎても耐久性は低くなります。

・表面処理 表面処理について解説したページでも触れましたが、クロムメッキは水素脆化により鋼鉄の耐久寿命を低下させます。

・バーベルシャフトの太さ シャフトは太いほど耐久性が高くなります。

・スリーブの長さ その他の条件が同じであれば、スリーブが短いほど落下時シャフトに掛かるストレスが軽減され、耐久性が高くなります。

・スリーブの耐久性 バーベルが動的応力を受ける時、シャフトはもちろんスリーブにも強いストレスが掛かります。スリーブの耐久性にはインナーカラーの結合強度やグリップエンドの固定方法、回転機構の種類といった要素が影響します。スリーブの耐久性が低い場合、バーベルシャフトよりも先にスリーブが寿命を迎えるため、シャフトがどれだけ頑丈でも、スリーブの耐久寿命がバーベル全体の耐久寿命となります。

・表面の腐食や傷 バーベルの腐食や傷はシャフトの耐久寿命を低下させます。

※これらの要素の中には実際にはあまり意味を持たないものもあります、スリーブの長さは使用する場所のスペースで、バーベルシャフトの太さは用途で選択するものであって、通常耐久性の優劣は製品選択の基準にはなりません。

 

動的応力に対応した耐久性指標ROGUEの『Fスケール』

バーベル耐久性の新基準として、ROGUEは『Fスケール』を開発しました、これは規定の応力での4点曲げテストを繰り返して、動的応力によるストレスをシミュレーションするもので、現在私の知る限り世界で唯一の動的応力に対応したバーベルの耐久性評価です。

しかしこの『Fスケール』には現在ROGUE以外のバーベルメーカーは参加しておらず、実質ROGUE社の社内規格となっています。ROGUE社のバーベル同士を比較するのには使えますが、ROGUE社とROGUE社以外のバーベルを比較するには現時点では使用できません。

 

本当に耐久性の高いバーベルを見つける方法

真に耐久性の高いバーベルを見つける為に、まずは最初に確認するべきはバーベルシャフトの引張強度です、190,000PSI以上の引張強度を持つ事と、その数値が信用できるものかを確認します。

通常老舗や大手メーカーのバーベルは信頼できる第三者機関での鋼材の引張強度テストを実施していますが、極端に安価なバーベルで引張強度が不自然に高い怪しい製品も見られます、引張強度の高い鋼材はそれ自体高コストで加工も難しくなります、安すぎる製品については根拠のない数値を記載しているケースもあると考えられます。

動的応力のほとんど掛からない使用環境の場合、190,000PSI以上の引張強度を持つバーベルを正しい使用方法を守って使用すれば半永久的に使用できます。

バーベルを頻繁にドロップする過酷な環境でバーベルを使用する場合、静的応力と合わせて動的応力に対する耐久性の高いバーベルを選ぶ必要があります、その為にはまずはバーベルシャフトの引張強度が190,000PSI以上220,000PSI以下で、シャフト部分がクロムメッキの製品を避けた方がよいでしょう。

加えて選択肢の中に複数の太さのバーベルシャフトがある場合、たとえばクロスフィットジム用のバーベルで28mmの28.5mmの選択肢がある場合は、28.5mmの物を選んだ方が耐久性の面では有利です。

これらの要素を鑑みた上で、更に競技用バーベルやアスリート施設向けバーベルの分野での実績のあるメーカーの製品を選ぶのが確実です。

バーベルの耐久性についてはどのメーカーも真偽はともかく同じようなスペックを主張しているという現実があり、引張強度のような数値は消費者には確かめるすべがありません、しかし実際に競技やトレーニングの現場にいる人達はメーカー毎の耐久性の差が歴然と存在する事を経験として知っています、となれば最終的に最も信頼の置ける判断基準になるのは『実績と評判』だからです。

バーベルにとって最も過酷な環境であるリフティングスポーツやアスリート向け施設、そういった場所で長年の実績があり現場で信頼されているバーベルこそ最も間違いのない製品と言えるでしょう。

 


【参考までに、当店で取り扱う各メーカーのバーベルの引張強度を下記に記載します。】

ROGUE社製オリンピックバーベル引張強度
→190,000 PSI~215,000 PSI

GYMWAY社製オリンピックバーベル引張強度
→216,000 PSI

ELEIKO社製オリンピックバーベル引張強度
→215,000 PSI

VILLAIN社製オリンピックバーベル引張強度
→190,000 PSI

バーベルの基礎知識 目次、用語解説

1,各種バーベルの違い

2,タイプ別オススメバーベル

3,バーベルの表面処理について

4,バーベルのローレットについて

5,バーベルのスリーブ、回転機構、着脱音について

6,バーベルのメンテナンスについて

7,バーベルの耐久性について

 

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