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03, バーベルの表面処理について

バーベルシャフトの表面処理には、『クロムメッキ』、『亜鉛メッキ』、『ブラックオキサイド』、『セラミックコーティング』、『Eコート』など様々な種類があり、それぞれが異なる特性を持っています。

また、表面処理が施されていない鋼鉄そのままのものも存在し、これは『ベアスチール』と呼ばれます。

近年では、クロムを含む合金鋼である『ステンレススチール』製のバーベルも人気を博しています。

バーベルの表面処理がこのように多様化している背景と、それぞれの特徴について解説していきたいと思います。

 

【バーベルに求められるスペックの上昇と、細分化される用途】

昨今の世界的なバーベルスポーツやファンクショナルトレーニングの隆盛、リフターやアスリートが扱うトレーニング重量の増加は、バーベルに求められるスペックを大きく変えました。

バーベルに求められる耐久性、強さ、しなやか、グリップ性能といったスペックは年々高くなっています。

加えて、最近では用途に応じて専門的に設計されたバーベルを選ぶことが一般的になり、特定の用途に最適化された特性やフィーリングを持つオリンピックバーベルが必要とされるようになりました。

一種類の表面処理でそれらすべてをカバーすることは不可能であり、バーベルに求められる水準の上昇も相まって、適材適所の様々な表面処理を持つバーベルが求められるようになっています。

 

【クロムメッキはもはや"標準"では無い】

かつてバーベルの表面処理といえばクロムメッキが主流でした。現在でもウェイトリフティングの競技用バーベルではクロムメッキが広く使われています。

しかし、クロムメッキが鋼鉄の耐久性を低下させることは、航空工学の分野で古くから知られており、この影響がバーベルの耐久性にもマイナスであることは各メーカーの研究によって証明されています。

クロムメッキによる金属の耐久寿命短縮は、バーベルの使用環境が厳しいほど深刻な問題となります。

近年では、クロムメッキを施したバーベルが減少する傾向にあり、代わりにバーベルの用途に最適化した様々な表面処理が採用されるようになりました。

※注: クロムメッキによる耐久性低下が問題になるのは主に応力がかかるシャフト部分です。一方、スリーブ部分にクロムメッキを使用する場合は強度低下は問題とならず、依然として優れたコーティングの一つです。

 

【各表面処理の5段階評価】

代表的な表面処理およびベアスチール、ステンレスに関して、『耐腐食性』、『耐摩耗性』、『摩擦力』、『ローレット』の4項目を5段階で評価します。

評価については私(筆者神野)の主観による部分もある為、参考程度にとどめておいて下さい。

5段階評価
最悪 ☆
悪い ☆☆
普通 ☆☆☆
良い ☆☆☆☆
最高 ☆☆☆☆☆

用語解説

・耐腐食性 表面処理の腐食に対する耐性、つまり錆びにくさです。日本は高温多湿で金属が錆びやすい環境の為、耐腐食性はバーベルを選ぶ際の重要なポイントとなります。

・耐摩耗性 表面処理の摩耗に対する耐性。耐摩耗性の低い表面処理は使用や経年劣化により徐々に鋼鉄の地肌が露出し、錆が生じるようになります。

・摩擦力 表面処理の摩擦力。摩擦力の高い表面処理は滑りにくさと良好なグリップフィーリングをもたらします。

・ローレット ローレットのエッジの強さ。ローレットのエッジはベアスチールのような表面処理の無い素材のバーベルでは強くなり、金属メッキのような厚みのある表面処置を施されたバーベルでは弱くなります。エッジの強いローレットは滑りにくく特に競技者に好まれますが、皮膚へのダメージが大きいというデメリットも有ります。

 

 

【硬質クロムメッキ】
耐腐食性 ☆☆☆
耐摩耗性 ☆☆☆☆
摩擦力  ☆☆
ローレット☆☆☆

硬質クロムメッキを施した鋼鉄シャフトは、美しい光沢と、錆びや摩耗に対する強さが特徴です。クロムメッキは長年にわたりバーベルコーティングのスタンダードとして信頼されてきました。特に競技用ウェイトリフティングバーでは、現在でもクロムメッキが主流です。皮膜が厚いため強度と耐摩耗性は高いものの、その反面、ローレットのエッジが弱くなり、手触りも滑らかでグリップ感が弱点となります。

また、硬質クロムメッキは耐久性が高いですが、安価な家庭用シャフトには耐久性の低い装飾クロムメッキが施されることがあり、これらの製品は短期間で錆びやメッキ剥がれが発生することがあります。

 

 

【亜鉛メッキ】
耐腐食性 ☆☆☆
耐摩耗性 ☆☆☆
摩擦力  ☆☆☆
ローレット☆☆☆

亜鉛メッキを施したバーベルには光沢亜鉛メッキと黒色亜鉛メッキがあります。金属メッキの中でも耐腐食性や摩擦力でクロムメッキを上回り、良好なグリップ感を提供します。

しかし、質感や耐摩耗性ではクロムメッキに劣り、経年劣化による変色は避けられません。クロムメッキと同様にメッキの厚みがあるため、ローレットのエッジも少し弱くなります。

 

 

【ステンレス】
耐腐食性 ☆☆☆☆☆
耐摩耗性 ☆☆☆
摩擦力  ☆☆☆
ローレット☆☆☆☆☆

ステンレススチールは鉄とクロムの合金で、表面に薄い酸化皮膜を形成するため、非常に錆びにくい特性を持っています。そのため、ステンレス製のバーベルは現状最も錆びにくいバーベルと評価できます。素材そのものが錆びにくいため、表面に追加のメッキ処理を行う必要がなく、ベアスチールと同じように深くエッジの効いたローレットが特徴です。
ステンレス製のオリンピックバーベルはハイエンド品が多く、価格が高いことがネックとなります。また、個々のユーザーによっては、ローレットが強すぎて使い心地が合わないと感じる場合もあります。




【ブラックオキサイド(黒染め加工)】
耐腐食性 ☆☆
耐摩耗性 ☆☆
摩擦力  ☆☆☆☆
ローレット☆☆☆☆


ブラックオキサイド加工は化学変換によって鋼鉄表面に被膜を作ります。非常に薄い黒色の皮膜は、クロムメッキや亜鉛メッキに比べ錆びやすく、強度も弱く傷が付きやすいですが、薄い皮膜がベアスチールに似た手触りとエッジの効いたローレットを提供します。ベアスチール同様、油分が切れると錆びるため、定期的な手入れが必要です。

 

 

【セラミックコーティング(セラコート)】
耐腐食性 ☆☆☆☆
耐摩耗性 ☆☆☆☆☆
摩擦力  ☆☆☆☆
ローレット☆☆☆

セラミックを主成分とするコーティングで、最も一般的には『セラコート』が知られています。セラコートはアメリカの企業が開発したセラミックコーティング剤で、元々は銃器に使用されていたものですが、近年では様々な用途に利用されています。このコーティングは耐腐食性と耐摩耗性において、クロムメッキや亜鉛メッキのような金属メッキを大幅に上回ります。また、金属メッキ特有の滑らかさがないため摩擦力が強く、さらに自由なカラーリングが可能という特徴があります。

バーベルの表面処理としては比較的新しいものですが、その優れた特性により、近年世界中で人気が高まっています。しかし、メリットが多い一方で、金属やJ-カップなどの硬い物体と接触する部分のコーティングは金属メッキよりも剥がれやすい(摩耗には強いが、チッピングには弱い)という欠点があります。特にカラフルなバーベルでは、コーティングの剥がれが目立ちやすいというデメリットもあります。

 

 

 

【Eコート】
耐腐食性 ☆☆☆
耐摩耗性 ☆☆☆
摩擦力  ☆☆☆☆
ローレット☆☆☆

Eコートは自動車業界から発展したコーティングで、近年はROGUE社が積極的にバーベルやケトルベルに採用しています。優れた耐摩耗性とグリップフィーリング、そしてコストパフォーマンスが特徴です。

 

【ベアスチール(コーティング無しの鋼鉄)】
耐腐食性 ☆
耐摩耗性 ☆☆☆
摩擦力  ☆☆☆☆☆
ローレット☆☆☆☆☆

表面にメッキ等の処理を施していない、生の鋼鉄そのままのバーベルは「ロウスチール」や「ベアスチール」と呼ばれます。

ロウスチールは摩擦力が高く、手に非常によく馴染むため、優れたグリップ感が得られます。また、表面処理がないため、深くエッジの効いたローレットになります。

コーティングがされていないため、非常に錆びやすいという欠点があり、小まめな手入れと油分の塗布が必要です。長期間使用して丁寧に手入れされたベアスチールのシャフトは、ベテラン料理人が使う鉄フライパンのように黒く変色し、独特の風合いを持ちます。

現在、国際パワーリフティング連盟の世界大会では、現在全てベアスチールのバーベルが使用されています。



バーベルの表面処理は多種多様で、特に最近は次々と新たな製品が登場しています。
MBC POWERでは常に最新の情報を調査し、このページも随時更新していくつもりです。

 

バーベルの基礎知識 目次、用語解説

1,各種バーベルの違い

2,タイプ別オススメバーベル

3,バーベルの表面処理について

4,バーベルのローレットについて

5,バーベルのスリーブ、回転機構、着脱音について

6,バーベルのメンテナンスについて

7,バーベルの耐久性について

 

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